ガット張りDADAでは、張り上げの度にテンションを測定しています。
張り上がり直後のテンション急降下していくところなので値はあまり意味を持ちませんが、Instagramにアップして前回と比べたり、次回の参考に使っています。
しかし、ショップ側の都合でいくと、こんな事はしない方が都合が良い訳です。なぜなら失敗張りがバレないから。クランプ(爪)でガットが滑ったり、緩み取りを丁寧にやらなかったりすると、ガットが緩かったり、毎回テンションが違ったりする訳です。
それでも200本以上やり続けた結果、ガット張りテンションに起因する様々な要因が見えてきましたので、まとめたいと思います。
(これからも作業の透明性と研究のためテンション測定は続けていき、本コラムも更新していこうと思います)
ガットの質でテンションが変わる
ガットによって伸縮性が違います。元に戻ろうとする力です。ゴムのように戻ろうとする物もあれば、飴や餅のように伸びたら伸びっぱなしの物もあります。当然前者の方がテンションは高く出ます。ポリスターなどに代表される後者の場合は低くなりガットもよく伸びます。シンセティックナイロンは復元性が高いので10ポンド程も高めになります。
柔らかいガットはテンション低め(ポリ)
一般に「柔らかい」と言われているポリガットは、張り上がりのテンション自体が上がってこないことが多いです。ゆえに柔らかさはテンションで操作できるとも言えます。柔らかさの代名詞ナイロン・マルチは構造的にテンションが低めに出ます。
ストリングマシンにターンブレーキは必須
Twitterから引用します。ターンブレーキの無いマシンはテンションが低くなります。
それだと接線に垂直方向に曲がるのでベクトル分解する上にグロメットR摩擦も加わり相当テンション落ちる。バドでは変形も変わる。
毎回張上がりテンション測定してないと分からない事。 pic.twitter.com/2rskIcMFHW
— ガット張りDADA (@stringerdada) 2018年3月13日
(2019.4.24追記)
上記は間違いです。グロメットの摩擦を考えた場合は上記の引き方が良さそうに見えますが、実際は力学的な力の分解から、テーブル中央に向かって真っすぐ引いた方がテンション出ます。
これ間違ってる。
力の分解はテンションユニット側では起きるが、ラケット側はグロメットが滑車の支点になって張力が釣り合う。(摩擦0の場合)
ターンテーブルの中心に向かって真っ直ぐ引いた方がいい。(ブレーキかけないとフレームの抗力で自然と中心を向く) pic.twitter.com/AtZVqeaJnr— ガット張りDADA (@stringerdada) 2019年4月23日
ガット張りにセッティングオールは必須
グロメットでのガットの曲がりによる摩擦と、縦糸横糸の交差による摩擦によりテンションかけても端から端まで同一テンションはかかっていません。例えばクロス一本50ポンド引いていても、右側50左側45ポンド状態になっていたりします。テンションの分布が均一でなかったり、グロメットに残っていたりすると、数分打っただけで一気にテンションが落ちます。緩み取りがしっかりされていないと張り上がりテンションが低く出ます。ただし、縦糸の過度な緩み取りは角切れの原因にもなるので注意が必要です。
無変形に近いほどテンションは低くなる
同じラケットに同じテンションで張ったとしても、より変形の無い方が若干ですがテンションが低くなるようです。変形していればフレームが戻ろうとする力が強くなるからかテンション高めになります。
テンション(打感)は横糸の寄与が大きい
ストリングの長さは横糸の方が短くなります。つまりバネ定数が上がって同じ力でもガットの変位(伸び)が少なく、縦糸よりも先に打感に効いてきます。同じハイブリッドでもテンションは、「縦ポリ横ナイロン>縦ナイロン横ポリ」となります。
(2019.4.24追記)
縦横のテンションを変えて張る場合(痩せるラケット→横ダウン,太るラケット→横アップ)、作業中のラケットの変形推移に伴ってテンション寄与側が違います。
- 横ダウンの場合:メインテンションベースの値になります。
- 横アップの場合:クロステンションベースの値になります。
(2019.9.10追記)
ナチュラルを一方に入れたハイブリッドの場合、ナチュラルではない方(ポリやシンセ)のテンションがトータル テンションとして表れてきます。