横糸は基本トップ→ダウン
- 最近のラケットはスイートスポットが上側にあること、「クロス先導部」と「メイン後張り部」は編む際に何度も摩擦下におかれ痛むので、ヒッティングポイントから遠ざけるように上→下にクロスを張っていきます。
- トップ→ダウンはラケットに優しいと言われます、真偽は分かりませんw。殆どのラケットはトップダウンで張ることを前提に設計されています。若干ですがトップダウンの方が性能的に優れる論文もあります。
[pdf]テニスラケットのフレーム振動におよぼすストリングスの張り方・張力分布の影響(1本張りと2本張りの張力分布の違いの影響)
- ハイブリッド以外はガット長とグロメットのタイオフダメージを減らすため、1本張りにしています。
- 注文時のテンションはメイン(縦糸)に適用しますが、クロス(横糸)はラケットの形状や変形をみながら変化させます(例:50ポンド注文→「メイン50p,クロス49~44p」など)。
- 何よりも変形無く原型に戻す事を最優先としますので、トップダウンではトップ側の太り変形を抑えきれないフレームや、ボトムアップの方が綺麗に原型に戻るケースでは、下から張り上げる場合もあります。
1本張り
メインが上で終わるラケットは基本そのままトップ→ダウン。
メインが下で終わるラケットは、ATW(Around The World)でトップ→グリップ側に向けて張っていきます。ガット張りによりラケットは、1.メインを張って縦に潰れ、2.クロスを張って縦潰れを戻す動きをします。ストリングマシンGM10EX剛性から、最初に一周させる「ユニバーサルATW」がベストのようですので、ショート側クロスは基本1本(スキップホールの状態で変化させます)で、2本張りに近い張り方を採用します。
上からの横糸張り下ろし(トップダウン)は変形防止のために途中クロステンションを下げて行きます。この下げ方のノウハウはストリンガーの経験による企業秘密的な要素がありますw。GOSEN張りに代表される横糸下からの張り上げ(ボトムアップ)の方が形が決まるラケットは、上から張る場合に比べ-3~-4Pテンションを落とし、そのまま上まで一気です。
およそ「痩せるラケットは上から、太るラケットは下から」で判断しています。量販店に注文されている方やホームストリンガーはストリングが張っていないラケット面形を画用紙になぞるなどして、変形をよく確認した方がいいと思います。変形はラケット自体にも良くありませんし、縦横どちらか勝って負けての状態なのでラケット本来の性能が出ません。
J’s ボックス
ユニバーサルATWは打感が柔らかくなります。
BabolaTのような硬く弾きの良い最近のラケットには適するのですが、柔らかく(変形し易い)しなる系ラケットにsoft×softでは好きになれないお客様もおられるかと思います。
その場合は上下を締めてから中央を張る「J’s ボックス」を採用します。非常に変形し難い、それでいて打感のしっかりした仕上がりとなります。
穴の位置やパターンで適さないラケットもありますが、可能な場合は提案させて頂きます。量販店で行われるGOSEN張りから移行される場合にも良いかと思います。
とにかく変形に強い張り方ですので、ユニバーサルATWや通常のトップダウンでは変形癖が納まりにくい場合、この張り方を選択します。
2本張り
クロスはトップ1本目をスターティングクランプで固定しプルテンション。あとは普通にトップ→グリップ側に向けて張っていき、トップは最後にタイオフします。スターティングノットをした事がありますがノットがめり込んだので、それ以降止めました。
2本張りでもグリップ側→トップに向けて張り上げる場合があります。グリップ側のタイオフは早めの方が良い感じがします。
アガシ張り(2本張りのJ’s ボックス)
ハイブリッドの2本張りは、メインを張り終え→クロスを張る、単純な張り方しかできません。縦と横のストリング分担が決まっているため取り回せないからです。
しかし、アンドレ・アガシはハイブリッドでJ’s ボックスをしていました。それがアガシ張りです。打感がシッカリし変形しない。メインの両端をクロス・ストリングが通って、知る人にはカッコいい。
問題は、通常の2本張りとはタイオフの数が上下逆転するため、設計上のタイオフホールでは足りないラケットが大半です。
ハイブリッドをお使いで興味のあるお客様はご相談下さい。
ノット(結び方)
グロメットへの陥没・抜け・解けがないように、以下のノットにしています。量販店のエイトノットは意味が分かりません。沈むし(グロメット損傷)、抜けるだろ。
ポリエステルはパーネルノット
ポリエステルは曲がると動きませんので、シンプルなパーネルノットにしています。クルクルってのが好きなんです。
ナイロンはダブルノット
柔らかくてヌルヌルしたナイロンはパーネルノットですらプレー中に解けた経験がありますので、柔らかいストリングは摩擦の大きいダブルノットにしています。また、ポリエステルでもタイオフホールが大きく、パーネルノットが穴に沈んでしまいそうな場合には、大きめのダブルノットにしています。